70代以上– category –

Dr. 大木沙織

こんにちは、皮膚科医の大木沙織です。

鏡に映る分け目が気になったり、以前のように髪型が決まらなかったりすると、外出の支度にも時間がかかりますね。髪の悩みを誰かに話すのは、ためらうかもしれません。

まずは、朝の支度や洗髪の際にどこで困るかを思い浮かべてみてください。鏡の前に長く立つのがつらいのか、後頭部が見えず整えにくいのか、気になる場面は人それぞれです。

長年親しんだ髪型や、好きな色をすべて変える必要はありません。今も気に入っているところを残しながら、負担に感じる部分から少しずつ見直していきましょう。

70代以上の女性の薄毛は、閉経後のホルモンの変化と髪そのものの加齢が重なって進みます。元の毛量に戻すより、頭皮をいたわりながら、今の髪を扱いやすく整えていくのが現実的な対策です。

このページでは、乾燥しやすい頭皮に合う洗い方と育毛剤の選び方を先に確かめます。続いて、根元が立ち上がりやすいショートカット、80代に向けた髪型の調整、ウィッグの使い分けへと進みます。

急に抜け毛が増えたときは、薬や体調が関わる場合もあります。年齢のせいと決めず、かかりつけ医に相談するのが安心です。

執筆・監修医師

大木皮ふ科クリニック 副院長 大木 沙織

名前:大木 沙織
大木皮ふ科クリニック 副院長
皮膚科医/内科専門医/公認心理師
略歴:順天堂大学医学部を卒業後に済生会川口総合病院、三井記念病院で研修。国際医療福祉大学病院を経て当院副院長へ就任。

所属:日本内科学会

70代女性の薄毛はホルモンと髪の加齢が重なる

女性ホルモンの減少と毛包の加齢が重なり、頭頂部や分け目の髪が細く短くなる関係図

閉経後に女性ホルモンが少ない状態が続くと、髪の成長と密度に変化が起こります。70代では、髪を作る毛包そのものの加齢も重なるのが特徴です。

頭頂部や分け目の透け方が変わる理由

髪が細く短くなると、頭頂部や分け目を中心に全体の地肌が透けやすくなり、白髪や手触りの変化も重なります。高齢者の薄毛の原因を相談する際は、更年期から抜け毛が続いているか、最近透け方が変わったかも伝える手がかりです。

急に進む70代の薄毛は薬や体調も確認

薬を変えたり増やしたりしたあとに抜け毛が増えたなら、服薬との関係も確認が必要です。お薬手帳を持ってかかりつけ医へ相談し、自己判断で薬をやめないでください。

食事量の減少や貧血にも注意

高齢女性の薄毛対策では、食が細い場合に卵や豆腐などのたんぱく質源を毎食に足す工夫も有用です。急な抜け毛には甲状腺の病気や貧血が関わる場合もあるため、かかりつけ医に相談し、食事制限がある人は食べ方も確かめます。

70代の薄毛ケアは乾燥に合わせた洗髪から

乾燥しやすい頭皮を指の腹で洗い、泡をすすぎ、熱を離して乾かす手順図

皮脂が減って乾きやすい頭皮には、強く洗うよりも刺激を抑える洗い方が向いています。汗や汚れを落としつつ、洗髪後のつっぱりにも目を向けましょう。

  • 洗うとき … ぬるま湯を使い、爪を立てず指の腹で洗う
  • すすぐとき … 耳の後ろや襟足まで泡を残さず流す
  • 乾かすとき … 熱を近づけすぎず、風を動かして乾かす

洗う回数は頭皮の状態で調整

70代女性のシャンプー選びでは、使ったあとのかゆみや乾燥が判断材料です。毎日洗うとつっぱる場合は1日おきにするなど間隔を調整し、汗や汚れが多い日は洗うようにします。回数を減らしても不快感が続くなら、皮膚科で相談できます。

薄毛が気になる70代の育毛剤選び

医薬部外品の育毛剤は、頭皮の環境を整え、抜け毛を防ぐために使います。発毛を目的とする治療薬とは働きが異なるため、治療を希望する場合は皮膚科で相談します。

成分表示と容器を一緒に確かめる

アルコールや香料で刺激を感じやすい人は、それらの有無も選ぶ基準です。握りにくい容器や狙った場所へ塗りにくい形は毎日の負担になるため、キャップの開閉や液だれのしにくさまで確かめます。

無理なく続けられる使い方を優先

70代女性が育毛剤を選ぶ際は、持病の薬や頭皮に塗る薬との併用について医師・薬剤師に確かめると安心です。表示どおりに使い、塗った部分の乾燥やふけの変化を確かめます。赤みやかゆみが出たら使用を中止します。

70代の薄毛に合わせるショートカット

女性のショートカットで、分け目、頭頂部、後頭部を整えるポイントを示した横顔図

ショートカットでも、地肌の透ける位置に合わせて髪を残す長さを変えられます。薄毛が気になって外出をためらう人にとって、髪型を整える工夫も日々の過ごしやすさにつながります。

トップの段差と横から見た丸み

頭頂部にレイヤーと呼ぶ長さの段差をつけ、横から見た後頭部に丸みを持たせると、髪の重なりを活かせます。ひし形は正面から見て頬の横に幅を持たせ、あごに向けて細くする輪郭で、地肌が透ける部分は短くしすぎない調整が必要です。

美容院では気になる場所を具体的に伝える

  • 気になる場所 … 地肌が透ける位置や髪の割れ方を伝える
  • 手入れの負担 … 腕を上げて乾かせる時間や道具の扱いやすさを伝える
  • 好み … 耳を出す長さや白髪を残す仕上がりの希望を伝える

分け目をぼかし、根元から乾かす

70代女性の薄毛をカバーするショートカットなどの髪型は、分け目を一直線にせず、根元を指で軽く起こして乾かすと形を整えやすくなります。

70代の薄毛対策から80代へ、手間を減らす髪型の調整

80代へと年齢が進み、髪の細さや腕の上げにくさが気になるなら、乾かすだけでまとまる形が候補です。以前と同じ整髪を続ける必要はありません。

乾かすだけでまとまる長さへ

80代女性の薄毛に合わせる髪型では、あご付近の長さのボブなど、乾かすだけでまとまりやすい形を検討できます。通院や美容院へ行く負担も踏まえて、伸びたときに形が崩れにくい長さを探します。

パーマは頭皮への刺激と施術間隔を相談

80代女性の薄毛をカバーするパーマは、髪に動きをつける一方で、薬剤が頭皮や髪の負担にもなります。頭皮が敏感なら美容師に伝え、刺激のおだやかな薬剤や、施術の間隔をあける調整について相談が必要です。

70代の薄毛を補うウィッグの範囲と手入れの選び方

部分ウィッグとフルウィッグの補う範囲や手入れ用品を見比べる分類図

ウィッグは髪を隠すだけでなく、外出前の支度や気持ちの負担を軽くするためにも選べます。補いたい範囲と、自分で手入れできる素材かどうかが選ぶ基準です。

地肌が気になる範囲に合わせる

頭頂部だけを補うなら部分ウィッグであるヘアピース、全体を覆うならフルウィッグを選べます。分け目やつむじの薄毛には、髪や頭皮にのせる着色した粉であるヘアパウダーで、地肌との色の差を和らげる方法もあります。

素材とサイズは試着で確かめる

70代女性のウィッグ選びでは、洗ったあとに整髪が必要な人毛と、形を保ちやすく手入れが手軽な人工毛を比べます。試着で締めつけや留め具の扱いやすさを確かめ、色と毛流れを自分の髪に合わせると境目が目立ちにくくなります。

よくある質問

70代から育毛剤を使い始めても遅くないですか?

70代からでも、頭皮の環境を整える目的で育毛剤を取り入れる選択はできます。ただし、始める年齢だけで働きの程度は決まりません。購入前に頭皮の状態と箱の「使用上の注意」「用法・用量」を確かめ、使えない条件に当てはまらないか確認します。

70代の薄毛が気になる女性は白髪染めをやめたほうがよいですか?

薄毛が気になるだけで、一律に白髪染めをやめる必要はありません。ただし、染毛剤の刺激やかぶれは頭皮の負担になるため、赤みやかゆみが出たら使用を中止してください。頻度を減らしたい人には、白髪を活かす髪型も選択肢です。

70代女性の薄毛は帽子の蒸れで悪化しますか?

帽子をかぶって蒸れたというだけで、薄毛の原因とは決められません。汗をかいたまま長く着けてかゆくなる場合は、外して汗を拭き、帽子も乾かします。強く締めつけない大きさと洗いやすい素材を選ぶと、清潔さを保ちやすくなります。

70代女性がウィッグを毎日着けると自分の髪に負担がかかりますか?

毎日着けるかどうかよりも、留め具が同じ場所を引っ張る状態や、締めつけが続く状態に注意が必要です。外したときに痛みや赤みがないか確かめ、留め方やサイズを調整します。製品の手入れ方法に従い、頭皮を清潔に保つ時間も取ります。

70代女性の薄毛を家族が気にしている場合、どう声をかければよいですか?

髪が減ったと指摘するより、髪の手入れで困っている場面がないかを尋ね、本人の希望を聞くのが出発点です。本人が望めば、美容院への付き添いや容器の開閉を手伝う形も選べます。本人に相談せず育毛剤やウィッグを買うのは避けましょう。

参考文献

Zouboulis, C. C., Blume-Peytavi, U., Kosmadaki, M., Roó, E., Vexiau-Robert, D., Kerob, D., & Goldstein, S. R. (2022). Skin, hair and beyond: the impact of menopause. Climacteric : the journal of the International Menopause Society, 25(5), 434-442. https://doi.org/10.1080/13697137.2022.2050206

Jang, H., Jo, Y., Lee, J. H., & Choi, S. (2023). Aging of hair follicle stem cells and their niches. BMB reports, 56(1), 2-9. https://doi.org/10.5483/BMBRep.2022-0183

Fernandez-Flores, A., Saeb-Lima, M., & Cassarino, D. S. (2019). Histopathology of aging of the hair follicle. Journal of cutaneous pathology, 46(7), 508-519. https://doi.org/10.1111/cup.13467

Alhanshali, L., Buontempo, M., Shapiro, J., & Lo Sicco, K. (2023). Medication-induced hair loss: An update. Journal of the American Academy of Dermatology, 89(2S), S20-S28. https://doi.org/10.1016/j.jaad.2023.04.022

Hwang, H. W., Ryou, S., Jeong, J. H., Lee, J. W., Lee, K. J., Lee, S. B., Shin, H. T., Byun, J. W., Shin, J., & Choi, G. S. (2024). The Quality of Life and Psychosocial Impact on Female Pattern Hair Loss. Annals of dermatology, 36(1), 44-52. https://doi.org/10.5021/ad.23.082

Kamp, E., Ashraf, M., Musbahi, E., & DeGiovanni, C. (2022). Menopause, skin and common dermatoses. Part 1: hair disorders. Clinical and experimental dermatology, 47(12), 2110-2116. https://doi.org/10.1111/ced.15327

Punyani, S., Tosti, A., Hordinsky, M., Yeomans, D., & Schwartz, J. (2021). The Impact of Shampoo Wash Frequency on Scalp and Hair Conditions. Skin appendage disorders, 7(3), 183-193. https://doi.org/10.1159/000512786

Weffort, F., Sales Martins, S., Plata, G. T., Duraes, C. T., & Melo, D. F. (2021). Do you know how to recommend a wig to your patient? Journal of cosmetic dermatology, 20(3), 724-728. https://doi.org/10.1111/jocd.13602

Dias, M. F. R. G., Loures, A. F., & Ekelem, C. (2021). Hair Cosmetics for the Hair Loss Patient. Indian journal of plastic surgery : official publication of the Association of Plastic Surgeons of India, 54(4), 507-513. https://doi.org/10.1055/s-0041-1739241

1