妊娠中に抜け毛がひどい原因は?急激な変化への対処法と受診の目安

妊娠中に抜け毛がひどい原因は?急激な変化への対処法と受診の目安

妊娠中に抜け毛がひどいと感じても、その多くは一時的な変化によるもので、髪の生えかわりのリズムやホルモンの動きが大きく関わっています。

一方で、鉄分の不足や甲状腺の不調など、見逃したくないサインが隠れている場合もあり、抜け方や量によっては受診が役立ちます。

この記事では、妊娠中に抜け毛が増えるおもな原因と見分け方に加えて、食事やヘアケアで今日から始められる工夫まで、わかりやすくまとめました。

さらに、受診を考えたい目安や産後の抜け毛との違いまで、不安がやわらいで前向きになれるようにやさしく整理しています。

目次

妊娠中に抜け毛がひどい原因は?まず押さえておきたい全体像

「妊娠中だから抜け毛は仕方ない」と思われがちですが、実際の妊娠中はむしろ髪が抜けにくい時期です。それでもひどいと感じるときは、ホルモンや栄養の変化といった引き金がいくつか重なっていることが多いといえます。

おもな背景増えやすい時期特徴
ホルモンの変化妊娠初期一時的なことが多い
鉄分・栄養の不足妊娠中をとおしてつわりや貧血で進みやすい
甲状腺の不調妊娠中から産後だるさなどを伴うことがある
ストレス・睡眠不足妊娠中をとおして数か月遅れてあらわれる

背景によって対応の仕方は変わります。まずは自分の抜け毛がどのタイプに近いのかを、落ち着いて見ていきましょう。

妊娠中はむしろ髪が抜けにくい時期

髪には伸び続ける成長期と、抜ける準備に入る休止期があります。妊娠中は女性ホルモンのはたらきで成長期が長く保たれ、抜ける髪が減る傾向にあります。

実際に、妊娠中は髪が太くなりやすいという報告もあります。つまり妊娠中の抜け毛は本来少なめで、だからこそ増えると目立ちやすいのです。

そのため、妊娠中に抜け毛が気になり始めたら、まず体に何か変化が起きていないか見直すきっかけにできます。量そのものより、いつもとの違いに目を向けてみてください。

それでも抜け毛が増えるのはどんなとき?

抜け毛が増える引き金は一つではありません。妊娠初期のホルモンの揺れ、つわりによる栄養不足、鉄分の不足、甲状腺の不調などが重なって起こります。

こうした引き金は、心と体の負担が大きいときほど表に出やすくなります。思い当たる変化がないか、生活を振り返ってみると手がかりが見つかるでしょう。

原因が重なって表に出るぶん、抜け毛は実際より多く感じられることがあります。一つずつ心当たりを整理すると、自分に合った対処も見つけやすくなるでしょう。

1日にどれくらい抜けると「ひどい」のか

髪は健康な人でも1日に50本から100本ほど自然に抜けます。シャンプーのときや朝の枕で多く感じても、この範囲なら心配は要りません。

気をつけたいのは、明らかに量が増えた、地肌が透けてきたといった変化です。数を細かく数える必要はなく、ふだんとの差を目安にするとよいといえます。

心配なときは、数日続けて枕やお風呂の排水口の様子をみると傾向がつかめます。一日だけの量で判断せず、何日かの流れで見ることが落ち着いた対応につながります。

妊娠中の抜け毛とホルモンバランスの乱れの深い関わり

髪のおよそ9割は伸び続ける成長期にあり、妊娠中はこの成長期がいつもより長く保たれます。だからこそ抜け毛が増えると目立ちやすく、その引き金の多くはホルモンバランスの揺れにあります。

エストロゲンが髪の成長期を支えるしくみ

女性ホルモンのエストロゲンには、髪の成長期を引きのばすはたらきがあります。妊娠中はこのホルモンが高く保たれ、抜けるはずだった髪も抜けずにとどまります。

その結果、妊娠中の髪はボリュームを感じやすくなります。逆にいえば、ホルモンが乱れると支えが弱まり、抜け毛として表にあらわれるのです。

エストロゲンと髪の成長期

時期エストロゲン髪の状態
妊娠中高く保たれる成長期が長く抜けにくい
妊娠初期変動が大きい一時的に抜けることも
出産後急に低下する休止期に入り抜けやすい

このようにホルモンの高さと髪の状態は連動します。妊娠初期の揺れが抜け毛につながるのも、同じしくみで説明できます。

妊娠初期に抜け毛が増えやすいわけ

妊娠初期はホルモンが一気に動くため、髪のリズムが乱れやすい時期です。この時期の変化が引き金となり、2〜3か月ほど遅れて抜け毛が増えることがあります。

多くは体が新しいバランスに慣れるにつれて落ち着きます。焦らず経過をみることが、この時期の抜け毛とのつきあい方になります。

抜け毛が増える時期と、引き金になった出来事には数か月のずれがあります。今の抜け毛は少し前の体の変化を映していると考えると、必要以上に不安にならずにすみます。

ピルの中止やつわりが重なるとき

妊娠前にピルを使っていた方は、中止のタイミングでホルモンが変わり、抜け毛が増える場合があります。妊娠初期のつわりが重なると、栄養不足も加わって抜け毛が進みやすくなります。

どちらも一時的なことがほとんどです。とはいえ食事がとれない状態が続くときは、無理をせず産婦人科に相談してください。

重なった原因が落ち着けば、髪の状態も後から追いついてきます。あせって市販のケア用品を増やすより、体を整えることを先に考えてみましょう。

鉄不足や栄養不足が妊娠中の抜け毛を招く理由

妊娠中の抜け毛の背景で見落とされやすいのが、鉄分やたんぱく質の不足です。赤ちゃんへ栄養が優先される時期だからこそ、髪に回る分が足りなくなりやすいといえます。

妊娠中に不足しやすい鉄分と貧血

妊娠中は赤ちゃんとママの両方に血液が必要になり、鉄分が不足しがちです。鉄が足りないと髪をつくる力が落ち、抜け毛や細りにつながることがあります。

立ちくらみや動悸、強い疲れを感じるときは貧血が隠れているかもしれません。健診の血液検査で分かるため、気になる症状は伝えておくと安心です。

鉄分は食事だけで十分に補えないこともあり、健診の結果に応じて医師が鉄剤をすすめる場合があります。自己判断でサプリを足す前に、まず数値を確かめておくと安心です。

髪をつくるたんぱく質・亜鉛・葉酸

髪の主成分はケラチンというたんぱく質で、材料が足りないと育ちにくくなります。亜鉛や葉酸も髪づくりを支える栄養で、妊娠中は意識して補いたいものです。

ただしサプリメントは自己判断で増やさず、種類と量を主治医に確かめましょう。妊娠中はとり過ぎが心配な栄養もあるためです。

いろいろな食品から少しずつとることで、髪に届く栄養がそろいやすくなります。一つの食材に頼らず、主食と主菜、野菜を組み合わせる食べ方を心がけましょう。

つわりで食べられないときの抜け毛

つわりがつらいと食事がかたより、鉄分やたんぱく質が不足しやすくなります。その影響が髪にあらわれ、数か月後に抜け毛として感じられることがあります。

食べられるものを少しずつとるだけでも助けになります。水分や栄養がとれないほどつらいときは、がまんせず受診してください。

髪づくりに関わるおもな栄養素

  • 鉄分(赤身の肉・あさり・小松菜)
  • たんぱく質(肉・魚・卵・大豆製品)
  • 亜鉛(牡蠣・ナッツ・全粒の穀物)
  • 葉酸(緑黄色野菜・果物)
  • ビタミンD(魚・きのこ・適度な日光)

これらをバランスよくとることが、髪の土台を整える近道です。特定の食品にかたよらず、無理のない範囲で続けることを大切にしましょう。

甲状腺の不調やストレスが隠れていることもある

短い期間でごっそり抜ける、地肌が透けてきたと感じるなら、甲状腺の不調やストレスが隠れていることがあります。こうした背景は検査で確かめられるため、早めの相談が安心につながります。

抜け方考えられる背景目安
全体的に薄くなる栄養不足・甲状腺・ストレス経過をみつつ相談
丸く部分的に抜ける円形脱毛症など早めに皮膚科へ
生え際や分け目が目立つホルモンや体質産後に経過をみる

同じ「抜け毛」でも、抜け方によって考えられる背景は変わります。次の項目で、それぞれの見分け方をみていきます。

妊娠中に起こりやすい甲状腺の変化

甲状腺は体の代謝を整える臓器で、ホルモンの量が髪の育ちにも影響します。妊娠中や産後はこのはたらきが乱れやすく、抜け毛の原因になることがあります。

甲状腺ホルモンには髪の成長期を保つはたらきがあり、多すぎても少なすぎても抜け毛につながります。だるさや動悸、むくみを伴うときは、血液検査で確かめてもらいましょう。

見逃しやすいのは、抜け毛だけでなく体重や気分の変化として出ることもある点です。髪以外の小さな不調も一緒に伝えておくと、医師が背景を読み取る手がかりになるでしょう。

ストレスや睡眠不足が引き金になることも

強いストレスや睡眠不足は、多くの髪を一度に休止期へ追いやることがあります。その影響は数か月遅れてあらわれ、抜け毛が増えたと感じる原因になります。

妊娠中は体も心も変化が大きく、無理をためこみやすい時期です。休む時間を意識してつくることが、抜け毛をやわらげる助けになるでしょう。

円形に抜けるときは別の原因かも

コインのように丸く抜ける場合は、円形脱毛症など別の原因が考えられます。境目がはっきりした脱毛は、一時的な抜け毛とは見分けが必要です。

こうした抜け方に気づいたら、自己判断せず皮膚科に相談してください。妊娠中でも受けられる診察があり、原因に合わせた対応を考えられます。

妊娠中の急な抜け毛に今日からできる対処法とセルフケア

妊娠中の抜け毛は、毎日の食事とヘアケアの見直しでやわらげられる部分があります。特別な道具はいらず、頭皮への負担を減らす工夫から始められます。

食事で髪の土台をやさしく整える

髪をつくる材料は、毎日の食事から届きます。たんぱく質と鉄分を中心に、いろいろな食材を少しずつ組み合わせることが土台づくりになります。

食べられる量が少ない日は、卵や豆腐など手軽なものから補いましょう。完璧を目指すより、続けられることのほうが大切です。

水分をこまめにとることも、栄養を体に巡らせる助けになります。食事を負担に感じる日は、温かい汁物にいろいろな具を入れると無理なく続けられます。

頭皮に負担をかけないヘアケア

洗いすぎや強いブラッシングは、弱った髪にとって負担になります。指の腹でやさしく洗い、髪を引っぱらないことが頭皮を守るこつです。

濡れた髪はとくに切れやすいため、こすらずにやさしく乾かしましょう。ちょっとした習慣の見直しが、抜け毛の予防につながります。

頭皮にやさしいヘアケアのポイント

  • ぬるめのお湯ですすぐ
  • 爪を立てず指の腹で洗う
  • きつく結ぶ髪型を避ける
  • 濡れた髪はやさしく乾かす
  • 引っぱる強いブラッシングを控える

どれも今日から取り入れられる工夫ばかりです。負担を減らすことが、いま残っている髪を守る一歩になります。

眠りと気持ちを休ませる時間を

睡眠と心の休息は、髪の育ちを支える土台です。短くても深く眠れる工夫や、ひとりで抱えこまない時間が抜け毛の予防に役立ちます。

家族や周囲に頼ることも、立派な対処の一つです。気持ちがほぐれると、体のリズムも整いやすくなります。

妊娠中の抜け毛で病院を受診する目安と何科に行くか

迷ったら相談して大丈夫です。妊娠中でも受けられる血液検査で、鉄不足や甲状腺の状態は確かめられます。

抜け方や体調しだいでは、自己判断せず受診する目安を知っておくと安心につながります。

こんな抜け毛は早めに相談を

丸く抜ける、短い期間で大量に抜ける、地肌がはっきり透けてきたといった変化は、早めの相談が向いています。だるさや動悸など体の不調を伴うときも同じです。

こうしたサインは、鉄不足や甲状腺など背景のある抜け毛のことがあります。早く分かるほど、対応の幅も広がります。

何科を受診すればいい?

髪や頭皮の状態をみてもらうなら、まずは皮膚科が向いています。妊娠中であることを伝えると、体に配慮した進め方を相談できます。

だるさやむくみなど全身の不調があるときは、内科や産婦人科でも構いません。気になる症状をまとめて伝えると、必要な検査につながりやすくなります。

どの科に行くか迷うときは、かかりつけの産婦人科で相談先を教えてもらう方法もあります。一人で抱えこまず、まず話してみることから始めてみてください。

妊娠中でも受けられる検査

鉄分や甲状腺の状態は、妊娠中でも血液検査で調べられます。体に負担の少ない検査が中心で、結果に応じて食事や治療の相談ができます。

薬を使う場合も、妊娠中に使えるものを医師が選びます。自己判断で市販薬やサプリに頼らず、まず相談することが安全につながります。

受診を考えたい抜け毛の目安

こんなとき受診の目安受診先
丸く・部分的に抜けるできるだけ早く皮膚科
だるさ・動悸・むくみを伴う早めに内科・産婦人科
数か月たっても増え続ける一度相談する皮膚科

当てはまる項目があっても、あわてる必要はありません。早めに相談することが、不安をやわらげる近道になります。

妊娠中の抜け毛と産後の抜け毛は何が違う?

妊娠中の抜け毛と産後の抜け毛は、起こる時期も仕組みも異なります。多くの場合、産後の抜け毛のほうが量は多く、時間とともに自然に落ち着いていきます。

産後に増える分娩後脱毛症

出産でホルモンが急に下がると、それまで抜けずにいた髪が一度に休止期へ入ります。これが分娩後脱毛症で、産後2〜4か月ごろに抜け毛が増えるのが特徴です。

多くの産後のママが経験する自然な変化で、病気ではありません。授乳や育児の疲れが重なると、より強く感じられることもあります。

抜け毛が一度に進むぶん驚きやすいものですが、新しい髪はその下からちゃんと育っています。抜けた量に目を向けすぎず、生えてくる力を信じて待つ姿勢も大切です。

妊娠中の抜け毛が長く続くとき

妊娠中の抜け毛は本来少なめのため、長く続くときは背景がある場合があります。鉄不足や甲状腺の不調などが隠れていないか、確かめる価値があるでしょう。

「そのうち治る」と決めつけず、気になる状態が続くなら相談しましょう。原因が分かれば、対応もしやすくなります。

元の髪に戻るまでの一般的な流れ

原因が一時的なものなら、体調が整うにつれて抜け毛は少しずつ落ち着きます。産後の抜け毛も、多くは半年から1年ほどで元のペースに近づきます。

戻り方には個人差があり、あせらないことが大切です。新しく生えてくる途中の短い毛は、回復のサインととらえてよいでしょう。

周りと比べて回復の早さが気になるかもしれませんが、髪のペースは人それぞれです。焦らずに栄養と休息を整えながら待つことが、結果として回復を後押しします。

妊娠中と産後の抜け毛の比較

項目妊娠中産後
起こりやすさ比較的少ない多くの人に起こる
増える時期妊娠初期など産後2〜4か月ごろ
戻り方原因しだい半年〜1年で落ち着くことが多い

こうして並べると、妊娠中の抜け毛と産後の抜け毛の違いが見えてきます。自分がどちらに近いかを知ることが、安心への一歩になります。

よくある質問

妊娠中の抜け毛はいつから増えやすいですか?

妊娠初期にホルモンが大きく動く時期や、つわりで食事がかたよりやすい時期に増えると感じる方がいます。多くは一時的で、体が落ち着くにつれてやわらいでいきます。

ただし量や抜け方が気になるときは、早めに相談すると安心につながります。一人で抱えこまず、健診の機会に伝えてみてください。

妊娠中の抜け毛は赤ちゃんに影響しますか?

抜け毛そのものが赤ちゃんの発育に直接影響することはありません。髪は栄養の優先順位が低いため、体が赤ちゃんを優先した結果として一時的にあらわれることがあります。

強いだるさや貧血の症状が重なるときは、産婦人科で相談してみてください。母体の状態を整えることが、結果として安心につながります。

妊娠中の抜け毛はシャンプーを変えれば治りますか?

シャンプーを変えるだけで抜け毛が止まるわけではありませんが、頭皮にやさしい洗い方は負担を減らす助けになります。原因が鉄不足や甲状腺にある場合は、その背景への対応のほうが大切です。

まずは食事や体調を整えながら、必要に応じて受診を考えてみましょう。洗い方の見直しは、あくまで毎日の支えと考えると気が楽になります。

妊娠中の抜け毛と円形脱毛症はどう見分けますか?

全体的に少しずつ薄くなる場合は、一時的な抜け毛のことが多いといえます。一方でコインのように丸く抜ける場合は、円形脱毛症が疑われます。

境目のはっきりした脱毛に気づいたら、自己判断せず皮膚科に相談してください。妊娠中でも受けられる診察があります。

妊娠中の抜け毛はいつ落ち着きますか?

ホルモンや栄養が背景の抜け毛は、体調が整うにつれて少しずつ落ち着くことが多いといえます。産後はいったん抜け毛が増えることもありますが、多くは半年から1年ほどで元のペースに近づきます。

長く続いて不安なときは、一度受診して原因を確かめると安心です。見通しが分かるだけでも、気持ちは軽くなります。

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この記事を書いた人

大木沙織のアバター 大木沙織 医療法人緑生会 大木皮ふ科クリニック副院長

名前:大木 沙織
大木皮ふ科クリニック 副院長
皮膚科医/内科専門医/公認心理師
略歴:順天堂大学医学部を卒業後に済生会川口総合病院、三井記念病院で研修。国際医療福祉大学病院を経て当院副院長へ就任。

所属:日本内科学会

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