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Dr. 大木沙織

こんにちは、皮膚科医の大木沙織です。診察室では、前髪を持ち上げた写真をお見せいただきながら「去年よりここが広くなっていませんか」と尋ねられることがよくあります。

お話をうかがうと、半年ほど前から気づいていて、家族に言っても気のせいだと返されるので様子を見ていた、という流れがほとんどです。

生え際は毎日鏡で見ている場所なのに、少しずつ進むと目が慣れてしまいます。気になった時点で撮った一枚が、あとで比べるときの手がかりになります。

女性の前髪や生え際の薄毛は、男性のように角から一気に後退するのではなく、一本ずつの毛が細くなって地肌が透ける形でゆっくり進みます。

背景にはホルモンの変化がありますが、髪の結び方や分け目の固定といった物理的な負担も重なるため、原因の見分けが先になります。打つ手が分かれるのは、局所だけが薄いのか全体が細っているのかという点です。

ケアは産毛を太く育てる方向と髪型で負担を減らす方向を並行させるのが現実的で、3〜6か月続けても変化がなければ皮膚科へ相談する段階に入ります。

執筆・監修医師

大木皮ふ科クリニック 副院長 大木 沙織

名前:大木 沙織
大木皮ふ科クリニック 副院長
皮膚科医/内科専門医/公認心理師
略歴:順天堂大学医学部を卒業後に済生会川口総合病院、三井記念病院で研修。国際医療福祉大学病院を経て当院副院長へ就任。

所属:日本内科学会

おでこが広いのか、生え際が薄いのか

生え際の薄毛を毛の太さと産毛の帯と抜けた毛の3か所で見分ける方法を示した図解

見分けの決め手はおでこの広さではなく、生え際に並ぶ毛が以前より細くなっているかどうかで判断します。

もともとの生え際と、後退した生え際

おでこの広さには生まれつきの個人差があり、広いこと自体は薄毛ではありません。以前は太い毛が並んでいた場所に細く短い毛が増えていれば、毛が育ちきらないまま生え替わっているサインです。

鏡で確かめる3つの目安

明るい場所で前髪を上げ、髪全体の量ではなく生え際そのものに生えている毛を一本ずつ確かめていきます。

  • 毛の太さ … 頭頂部あたりの髪と比べて、明らかに細い毛が混じっていないか
  • 産毛の範囲 … 生え際から額側へ、短い毛の帯が広がっていないか
  • 抜けた毛 … 排水口やブラシの毛に、短くて細いものが増えていないか

3つとも当てはまるようなら、次は前髪とM字のどちらの型で進んでいるのかを確かめる段階へ移ります。

女性の生え際が後退する原因

生え際が薄くなる背景には、ホルモンの変化と、髪を引っ張る力と、頭皮の環境の3つが重なっています。

エストロゲンの減少と毛周期の乱れ

髪が伸びる期間を支えているのは、女性ホルモンのエストロゲンです。出産後や更年期のようにエストロゲンが急に減る時期には、伸びる期間が短くなり、太くなりきる前に抜ける毛が増えます。

生え際はもともと毛が細く量も少ないため、この変化が地肌の透けとして顔まわりに早く表れます。

髪を引っ張る力が続く牽引性脱毛症

きつく結んだポニーテールやお団子、エクステの長期装着、同じ位置で固定し続けた分け目といった引っ張る力が毛根に加わり続けて起きるのが牽引性脱毛症で、ホルモンとは別の道すじで生え際を痩せさせます。

結び目の周りや分け目の際だけが局所的に薄いなら、まず牽引性脱毛症を疑って、髪を引っ張らない結び方へ変えるところから始めます。

頭皮の乾燥と血流の落ち込み

生え際は皮脂の出方が額寄りと頭頂寄りで変わり、乾燥とべたつきが同居しやすい場所です。冷えや睡眠不足で頭皮の血流が落ちると、毛を作る細胞へ届く栄養も細ります。

前髪・おでこ・M字で進み方が違う

前髪全体が細くなる型と、こめかみの角が後ろへ退くM字型という女性の生え際の薄毛の2つの進み方を並べた図解

同じ生え際の薄毛でも、前髪全体が薄くなる型と左右の角から下がる型では、気づくきっかけが変わります。

前髪全体がスカスカになる型

前髪の毛が一本ずつ細くなっていき、束ねたときに毛先が痩せて見えるようになるのがこの型です。分け目が割れて地肌の線がはっきり見えてくるのも同じ型で、女性にはこちらのほうが多く見られます。

左右の角から下がるM字型

こめかみ寄りの角が少しずつ後ろへ下がっていき、額の輪郭が角ばって見えるようになるのがこの型です。男性に多い形ですが、女性の場合は毛が完全に無くなるのではなく産毛化という形で現れます。

前髪がスカスカに見える薄毛と、おでこの角が下がるM字の薄毛では、育毛剤を当てる範囲も改善までの見通しも変わります。女性の生え際に多いのは産毛が細いまま残る形で、そこを太く育てられるかどうかが分かれ目です。

生え際の薄毛に育毛剤でできること、できないこと

育毛剤が働きかけられる毛根の残る毛と範囲の外にある毛根を失った跡を上下に分けた図解

育毛剤が働きかけるのは今ある産毛を太く育てる方向で、毛包が失われた場所へ新しい毛を呼び戻すものではありません。

産毛が変わるまでにかかる時間

毛には生え替わりの周期があるため、塗り始めてから手応えが出るまでには数か月の時間がかかります。今ある細い毛が抜けて、次に生えてくる毛と入れ替わる分だけ時間が要るという順序です。

1か月ほどで見た目が変わらなくても、そこでやめずに毛が入れ替わる周期のぶんは続けてみてください。

生え際に合う育毛剤の選び方

生え際は顔の皮膚と地続きで刺激を受けやすいため、女性向けに設計され、保湿と血行に配慮した処方かどうかを見ます。おでこ側の産毛をどこまで育てられるかという範囲と、後退した部分に合う育毛剤の選び方は、それぞれ別に押さえておくと薄毛のケア方法で迷いません。

生え際は液が垂れやすい

生え際は傾斜が急なので、さらさらした液はそのまま顔へ流れてしまいます。成分が届かないまま拭き取ることになり、続ける気力も削がれがちです。とろみのある処方を選び、点で置いて指の腹で押し込む塗り方に変えると、キワまで留まります。

前髪の薄毛が目立たない髪型と日々の扱い

毛を育てるケアと並行して負担を減らすと、生え際の減り方はゆるやかになります。今日から変えられるのはこちらです。

  • 分け目 … 1〜2センチずらすと、寝ていた根元が立ち上がって地肌が見えにくくなる
  • 結び方 … 高い位置できつく結ぶ形を毎日続けず、位置と強さを変える
  • 乾かし方 … 生え際は根元を起こすように乾かし、熱を一点に当て続けない

前髪を厚めに残す、斜めやジグザグに分けるといった髪型の工夫は、地肌の透けを隠す助けになります。薄毛を育て直す時間を稼ぐあいだ、見た目の側から支えてくれる方法です。

生え際の薄毛で皮膚科に相談する目安

セルフケアの期間と抜け毛の継続と地肌の透けの3つの合図から皮膚科の受診へ進む流れを表した図解

セルフケアを3〜6か月続けても手応えがないときは、原因を確かめる段階です。

抜け毛が3か月以上増え続けている、地肌の透けが目に見えて広がった、といった変化も相談の目安になります。甲状腺の病気や鉄不足が隠れていることもあり、そこは検査でしか切り分けられません。

前髪で隠せるうちに動けると打てる手は多く残るため、おでこの広がりに違和感を覚えた時点が、生え際の後退を初期ケアへ切り替える分かれ目になります。

よくある質問

前髪の薄毛は元の状態まで戻りますか?

毛根が生きている産毛の段階であれば、太く育つ余地は残っています。一方で毛包そのものが失われた場所は、セルフケアでは埋まりません。どちらの段階かは頭皮を拡大して見ると判断しやすく、迷うときは皮膚科で確かめてください。

生え際の薄毛に育毛剤はいつまで使い続けますか?

毛の生え替わりに合わせるため、まずは3〜6か月を一区切りとします。途中でやめると元の毛周期に戻りやすく、判断が難しくなります。手応えがあれば継続し、変化がなければ原因の見直しへ進むという順序が現実的でしょう。

前髪の薄毛は結び方を変えるだけで改善しますか?

引っ張る力が主な原因であれば、結び方をゆるめて位置を変えるだけで進行が止まることもあります。ただしホルモンの変化が重なっている場合、それだけでは足りません。局所的な薄さか全体的な細りかで、打つ手が分かれます。

生え際の薄毛は市販のシャンプーだけでも対策できますか?

シャンプーは頭皮の汚れを落とし、育毛剤が届く土台を整える役目です。洗うこと自体が毛を太くするわけではないため、単独での対策には限りがあります。刺激の少ないものを選び、育毛剤と組み合わせる形が向いています。

生え際の薄毛は何科を受診すればよいですか?

まずは皮膚科が窓口になります。頭皮の状態を拡大して見たうえで、必要に応じて血液検査で鉄や甲状腺のはたらきを調べます。薄毛の相談を扱っている医療機関であれば、髪の悩みの経過や生活背景まで含めて聞き取ってもらえるでしょう。

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