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Dr. 大木沙織

こんにちは、皮膚科医の大木沙織です。

毎日同じ位置で髪を結んだり、同じ分け目を続けていませんか?
生え際や分け目の薄毛は、遺伝やホルモンではなく、「物理的なダメージ(毛根の疲れ)」が原因かもしれません。これを「牽引性脱毛症」と呼びます。

怖い名前に聞こえますが、実は原因(引っ張る力)を取り除けば、最も回復しやすい薄毛でもあります。

おしゃれを我慢する必要はありません。ほんの少し結び方や分け目を工夫するだけで、髪は守れます。その具体的なテクニックをここでお伝えします。

牽引性脱毛症は、ポニーテールやエクステなど髪を引っ張るヘアスタイルの習慣によって起こる脱毛症です。

加齢やホルモンとは関係なく、10代から60代まで幅広い年齢の女性に発症する可能性があります。早い段階で気づいて対処すれば、髪は再び生えてきます。

この記事では、牽引性脱毛症の原因から症状の見分け方、セルフケアや皮膚科での治療法、そして再発を防ぐ予防法まで、専門的な知見をもとにわかりやすく解説します。

執筆・監修医師

大木皮ふ科クリニック 副院長 大木 沙織

名前:大木 沙織
大木皮ふ科クリニック 副院長
皮膚科医/内科専門医/公認心理師
略歴:順天堂大学医学部を卒業後に済生会川口総合病院、三井記念病院で研修。国際医療福祉大学病院を経て当院副院長へ就任。

所属:日本内科学会

牽引性脱毛症は「髪の引っ張りすぎ」が招く脱毛症

牽引性脱毛症とは、髪の毛に長期間にわたって物理的な引っ張る力(牽引力)が加わり続けた結果、毛根がダメージを受けて抜け毛や薄毛が生じる脱毛症です。

遺伝やホルモンバランスの変化とは異なり、外部からの物理的な刺激だけが原因となります。つまり、原因を取り除けば改善が見込めるという点が大きな特徴です。

ただし、長年にわたって頭皮に負担をかけ続けた場合は、毛包(もうほう)と呼ばれる髪をつくる組織そのものが傷つき、永久に髪が生えなくなるケースもあります。

他の脱毛症とはどう違う?

女性の脱毛症にはFAGA(女性男性型脱毛症)や円形脱毛症などさまざまな種類がありますが、牽引性脱毛症は「物理的な力が原因」であるという点で明確に異なります。

FAGAは加齢やホルモンの影響で頭部全体が薄くなるのに対し、牽引性脱毛症は髪を引っ張られている部分だけが局所的に脱毛するという違いがあります。

たとえば、いつもポニーテールにしている方は生え際やこめかみ付近が薄くなり、お団子ヘアを好む方は頭頂部の分け目周辺に症状が出やすい傾向があります。

脱毛が生じている場所と普段のヘアスタイルの関係を振り返ると、原因の見当がつくでしょう。

女性に圧倒的に多い理由は日常のヘアスタイルにある

牽引性脱毛症は男女問わず起こりえますが、実際に悩んでいる方の大半は女性です。ポニーテール、三つ編み、お団子、ハーフアップなど、髪をまとめるスタイルを日常的に繰り返すことが主な原因となるためです。

仕事やスポーツの場面で髪をきつく結ぶ習慣がある方、エクステやウィッグを長期間使用している方は、年齢に関係なく発症するリスクがあります。10代や20代であっても油断は禁物です。

牽引性脱毛症がなぜ起こるのか、予防策もあわせて知りたい方へ
牽引性脱毛症の発症原因と日常でできる予防策

牽引性脱毛症と他の脱毛症の比較

比較項目牽引性脱毛症FAGA
主な原因髪への物理的な牽引力ホルモンバランスの変化・加齢
脱毛パターン生え際や分け目など局所的頭部全体がまばらに薄くなる
年齢との関連年齢を問わず発症40代以降に多い
自然回復原因を除けば回復可能進行性で自然回復は難しい

こんな髪型が原因になる|牽引性脱毛症を引き起こすヘアスタイル

牽引性脱毛症を起こすもっとも大きな原因は、毎日のヘアスタイルです。髪をきつく引っ張る結び方を長期間続けると、毛根に慢性的な負担がかかり、少しずつ脱毛が進行していきます。

ポニーテール・三つ編み・エクステが特にリスクが高い

牽引性脱毛症をもっとも起こしやすいヘアスタイルとして、きつく結んだポニーテール、タイトな三つ編みやコーンロウ、そしてエクステンション(つけ毛)が挙げられます。

いずれも髪の根元に強い力がかかりやすく、同じスタイルを毎日繰り返すほどリスクは高まります。

特にエクステは、地毛に人工の毛束を編み込んだりゴムで固定したりするため、装着中は常に毛根への負荷がかかっている状態です。

加えてエクステの重みそのものが引っ張る力を増幅させるため、長時間つけっぱなしにすると毛包へのダメージが蓄積しやすくなります。

どんな髪型が牽引性脱毛症の原因になるか、具体例を詳しくまとめました
牽引性脱毛症を引き起こすヘアスタイルと対策

分け目の固定や帽子・ヘアバンドにも要注意

きつい髪型だけが原因ではありません。何年も同じ位置で分け目をつけ続ける習慣も、分け目周辺の毛根に慢性的な負担をかけます。分け目が目に見えて広がってきたら、牽引性脱毛症の初期サインの可能性があります。

さらに、きつめの帽子やヘアバンド、ヘルメットなどを長時間かぶり続ける場合も同様です。頭皮の特定部位が常に圧迫されることで血流が悪くなり、毛根への栄養供給が低下して脱毛を引き起こすときがあります。

頭皮に負担をかけないやさしいヘアスタイルのコツ

  • きつく結んだポニーテールやお団子ヘア
  • コーンロウ・タイトな三つ編み・編み込み
  • エクステンションやウィッグの長期装着
  • 同じ位置での分け目の固定
  • きつい帽子やヘアバンドの長時間使用

見逃さないで!牽引性脱毛症の初期症状と進行サイン

牽引性脱毛症は初期の段階で気づいて対処すれば回復できますが、放置して進行させてしまうと永久に髪が生えなくなるリスクもあります。だからこそ、早期のサインを見逃さないことがとても大切です。

生え際のかゆみ・赤み・産毛の減少は危険信号

牽引性脱毛症のごく初期には、髪を結んだ部分や生え際に軽い痛みやかゆみ、頭皮の赤みが出るときがあります。

毛穴周辺にニキビのような小さなブツブツ(毛嚢炎)ができるケースもあり、これは毛根が引っ張られて炎症を起こしているサインです。

もうひとつ注目したいのが、生え際に残る細い短い毛(フリンジサイン)の変化です。生え際の産毛が減ってきた、あるいは前より生え際が後退した気がすると感じたら、早めに髪型の見直しを検討してください。

生え際の後退が気になる方に、前髪周辺を守るケア方法の解説を読む
生え際の牽引性脱毛症を防ぐための予防ケア

放置すると永久に髪が生えなくなることもある

初期の段階では毛根はまだ生きており、原因を取り除けば髪は自然に回復します。しかし、何年も同じヘアスタイルで引っ張り続けた場合、毛包が瘢痕化(はんこんか=傷跡のように硬くなること)して永久に機能を失ってしまうことがあります。

一度瘢痕化した毛包からは二度と髪が生えてきません。「まだ大丈夫」と思っているうちに手遅れになるケースもあるため、少しでも気になる症状があれば、早めに皮膚科を受診しましょう。

牽引性脱毛症はどのくらいの期間で回復するのかを確認
女性のための牽引性脱毛症の回復期間ガイド

牽引性脱毛症の進行段階

段階症状回復の見込み
初期かゆみ・赤み・毛嚢炎・軽い痛み原因を除去すれば高い確率で回復
中期明らかな脱毛・切れ毛の増加ケア次第で回復可能だが時間がかかる
後期毛包の瘢痕化・永久脱毛自然回復は困難、医療的対応が必要

牽引性脱毛症は正しく対処すれば治せる

牽引性脱毛症は、原因となっている習慣をやめてケアを行えば、多くのケースで回復が期待できます。まずは自宅でできるセルフケアから始めて、それでも改善が見られなければ皮膚科の受診を検討しましょう。

今日からできるセルフケアと生活習慣の見直し

治療の第一歩は、髪を引っ張っている原因を取り除くことです。きつく結んでいたポニーテールをやめる、エクステを外す、分け目を定期的に変えるなど、毛根への負担を軽減する工夫から始めてみてください。

頭皮マッサージも効果的です。指の腹でやさしく頭皮を動かすように揉みほぐすと、血流が促進されて毛根に栄養が届きやすくなります。シャンプーの際にも力を入れすぎず、泡で包み込むように洗うと頭皮への刺激を減らせます。

髪と頭皮の健康には栄養バランスのよい食事も欠かせません。タンパク質、亜鉛、鉄分、ビタミンB群を意識して摂取すると、髪の成長をサポートできます。過度なダイエットは栄養不足による脱毛を助長するため避けましょう。

自宅でできるセルフケアの具体的な方法について
牽引性脱毛症のセルフケアと自宅治療法

皮膚科で受けられる治療と回復までの目安

セルフケアだけでは改善が難しい場合、皮膚科で専門的な治療を受けるという選択肢があります。医師の診察では、ダーモスコピー(拡大鏡を使った頭皮の観察)で毛根の状態を確認し、牽引性脱毛症かどうかを正確に診断します。

治療法としては、炎症を抑えるためのステロイド外用薬や、毛根の再活性化を促すミノキシジル外用薬が用いられるケースがあります。

外用薬による治療では、早い方で3か月ほどで産毛の再生が見られ、6か月から1年ほどかけて徐々に髪が回復していく方が多いです。

進行が進んで毛包が完全に瘢痕化している場合は、外用薬だけでは改善が難しく、植毛手術が検討されることもあります。だからこそ、瘢痕化が進む前の段階で受診することが回復への近道です。

牽引性脱毛症に対応する皮膚科の治療内容を知りたい方へ
皮膚科で受けられる牽引性脱毛症の治療法

  • きつい髪型をやめて毛根への負荷を減らす
  • 頭皮マッサージで血行を促進する
  • タンパク質・亜鉛・鉄分を意識した食事を心がける
  • 症状が続く場合は皮膚科を受診し、外用薬の処方を相談する

牽引性脱毛症の治療に役立つヘアケア方法

二度と繰り返さない!牽引性脱毛症の予防法

牽引性脱毛症はヘアスタイルや日々のケア習慣を見直すと防げる脱毛症です。一度治っても同じ習慣を続ければ再発するため、予防を日常に組み込むことが髪を守る鍵になります。

頭皮にやさしいヘアスタイルの選び方

髪をまとめる必要がある場面でも、頭皮に負担をかけない工夫はたくさんあります。まず、ゴムで結ぶ位置を毎日少しずつ変えるだけでも、同じ部分に負荷が集中するのを防げます。

シュシュやスプリングヘアゴムなど、太くてやわらかい素材のヘアアクセサリーを選ぶのも効果的です。

細い輪ゴムタイプのゴムは髪をきつく締めつけやすいため、できるだけ避けましょう。髪を下ろす時間を1日のなかで意識的に設けることも、毛根を休ませるうえで大切です。

毎日のヘアケアで髪と頭皮を守るコツ

ブラッシングの際は毛先のもつれをまず解いてから、根元へと段階的にとかすようにしてください。いきなり根元から力任せにとかすと、毛根に余計な負担がかかります。目の粗いコームやクッション性のあるブラシを使うのがおすすめです。

ドライヤーで乾かす際も、同じ箇所に長時間熱風を当て続けないように気をつけましょう。また、就寝時に髪をきつく結んだまま寝る習慣がある方は、髪を下ろすか、ゆるくまとめた状態で休むように切り替えてみてください。

治療から回復までの全体像を確認したい方へ
牽引性脱毛症の治療と回復の総合ガイド

ケアのポイント具体的な方法
結ぶ位置を変える毎日少しずつずらし、同じ部分に負荷が集中するのを避ける
やさしい素材を選ぶシュシュやスプリングゴムなど、締めつけの弱いアクセサリーを使う
髪を下ろす時間を設ける帰宅後や就寝中は髪を解放して毛根を休ませる
ブラッシングの順序毛先→中間→根元の順にとかし、力を入れすぎない

よくある質問

牽引性脱毛症はどのくらいの期間で治りますか?

牽引性脱毛症の回復期間は、症状の進行度合いや個人差によって異なります。初期段階であれば、原因となる髪型をやめてから数週間から数か月で改善が見られることが多いでしょう。

中程度まで進行している場合は、外用薬を併用しながら6か月から1年ほどかけて回復を目指すケースが一般的です。ただし、毛包が瘢痕化してしまった場合は自然な回復が難しく、より長期的な治療が必要になることもあります。

牽引性脱毛症は自然に治ることがありますか?

牽引性脱毛症は、原因となっている牽引力を取り除けば、軽度の場合は自然に回復する可能性があります。髪を引っ張るスタイルをやめるだけで、毛根が回復して再び髪が生えてくるケースは珍しくありません。

しかし、長期間にわたって放置していた場合や、頭皮に強い炎症や瘢痕が生じている場合は、自然回復だけでは十分な改善が得られないこともあります。少しでも症状が気になったら、早めの対処が回復への近道です。

牽引性脱毛症とFAGA(女性男性型脱毛症)は併発しますか?

牽引性脱毛症とFAGAは原因が異なる別の脱毛症ですが、同時に発症することはありえます。FAGAによってホルモンの影響で髪が細くなっているところに、きつい髪型による牽引力が加わると、脱毛の進行がさらに加速するおそれがあります。

どちらの脱毛症が起きているかによって適切な対処法が変わりますので、自己判断せず皮膚科で正確な診断を受けることが大切です。医師が頭皮の状態を観察し、脱毛のパターンや原因を特定したうえで、それぞれに合った治療方針を提案してくれます。

牽引性脱毛症に市販の育毛剤は効果がありますか?

市販の育毛剤のなかには、頭皮の血行促進や毛根への栄養補給をサポートする成分が含まれている製品もあります。ただし、育毛剤だけで牽引性脱毛症を治すのは難しく、もっとも重要なのは原因である髪への牽引力を取り除くことです。

育毛剤はあくまで補助的なケアのひとつとして捉えてください。原因を除去しないまま育毛剤を使い続けても、根本的な改善にはつながりにくいでしょう。症状が続く場合は、自己判断に頼らず皮膚科で医師の診察を受けることをおすすめします。

牽引性脱毛症を予防するために分け目はどのくらいの頻度で変えればよいですか?

分け目を変える頻度に厳密な医学的基準はありませんが、2週間から1か月に1回程度の間隔で位置をずらすことが推奨されています。同じ位置で分け続けると、その部分の毛根に慢性的な負担がかかり、分け目周辺の脱毛につながるリスクがあります。

ジグザグの分け目にしたり、左右を交互に変えたりするだけでも効果があります。朝のスタイリングの際に意識的に位置をずらす習慣をつけると、特定部位への負荷を分散でき、牽引性脱毛症の予防に役立ちます。

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