甲状腺の病気で抜け毛が増える?ホルモン異常と薄毛の関係を解説

甲状腺の病気は、女性の抜け毛を増やす原因のひとつです。甲状腺ホルモンが多すぎても少なすぎても、髪は休止期に入りやすくなり、地肌全体がうっすらと透けて見えてきます。
とはいえ、甲状腺による抜け毛の多くは一時的なもの。ホルモンの値が整えば、数か月かけて少しずつ戻っていきます。むやみに悲観する必要はありません。
この記事では、機能低下症と亢進症それぞれの抜け毛のサイン、女性型脱毛症との違い、検査や受診の目安、治療で髪が回復するまでの過ごし方まで、順を追って解説します。
甲状腺の病気で抜け毛が増えるのは本当です
甲状腺の病気は、女性の抜け毛を増やす原因のひとつです。ホルモンが多すぎても少なすぎても、髪は本来のリズムを崩して抜けやすくなります。
| 区分 | 正常な髪 | 甲状腺が乱れたとき |
|---|---|---|
| 成長期 | 髪が太く長く伸びる | 成長期が短くなりやすい |
| 休止期 | 全体の約1割が休んでいる | 休止期の割合が増える |
| 抜け毛の量 | 1日50〜100本ほど | 洗髪時などに大幅に増える |
甲状腺ホルモンは、全身の代謝を支えるアクセルのような存在です。髪を生み出す毛根もその影響を強く受けるため、ホルモンの乱れがそのまま頭皮にあらわれます。
甲状腺ホルモンは髪の生えかわりを動かしています
毛根は、伸びる時期(成長期)と抜ける準備をする時期(休止期)をくり返しています。甲状腺ホルモンは、この生えかわりのリズムを保つ調整役です。
ホルモンが十分にあると、成長期がしっかり続いて髪は太く育ちます。逆に不足したり過剰になったりすると、リズムそのものが乱れてしまうのです。
髪の成長期は2〜6年ほど続くといわれます。甲状腺ホルモンが安定していれば、この長い成長期のあいだ、髪は根もとからしっかり太く育っていきます。
ホルモンが乱れると休止期の髪が一気に増えます
甲状腺の不調で起こりやすいのが、休止期脱毛(telogen effluvium)と呼ばれる抜け毛です。多くの毛根がいっせいに休止期へ移ると、2〜3か月遅れて抜け毛がどっと増えます。
シャンプーやブラッシングのたびに、ごっそり抜けて驚く方も少なくありません。一部分だけでなく、頭全体から均等に抜けるのがこのタイプの特徴といえます。
抜けはじめる時期と、原因となった不調が起きた時期にズレがあるのも見逃せない点。今の抜け毛が、数か月前の体調を映す鏡になっていることもあります。
地肌全体がうっすら透ける、びまん性の薄毛
甲状腺が関わる抜け毛は、円形にはげるのではなく、髪の密度が全体的に下がる「びまん性」の形をとります。分け目や頭頂部だけでなく、髪のボリューム全体が落ちていきます。
眉毛やまつげ、体毛まで薄くなることもあり、その点が頭皮だけに起こる脱毛症との違いになります。
分け目を写真で定期的に記録しておくと、変化に気づきやすくなります。日ごとの本数に一喜一憂せず、月単位でゆるやかに眺めるのがおすすめです。
甲状腺機能低下症や橋本病で増える抜け毛のサイン
抜け毛は年齢のせい、とは限りません。甲状腺機能低下症や橋本病が隠れていると、髪はゆっくりと、しかし確実に減っていきます。
髪のボリュームが減り、眉の外側まで薄くなることも
機能低下症では甲状腺ホルモンが足りず、代謝全体がゆるやかになります。髪は乾いてパサつき、太く育ちきる前に抜けてしまいがちです。
特徴的なのが、眉毛の外側3分の1あたりが薄くなる変化。鏡で眉尻の毛量を見比べてみると、左右や以前との差に気づくことがあります。
一本ずつが細るというより、抜ける本数が増えて全体の密度が下がるのが機能低下症の傾向です。ドライヤー後にまとまりにくいと感じたら、その小さなサインかもしれません。
冷え・むくみ・疲れやすさが一緒に出ていませんか?
甲状腺機能低下症の抜け毛は、単独で起こるとは限りません。代謝が落ちることで、体にもさまざまなサインがあらわれます。
機能低下症で出やすい体のサイン
- 強い冷えや寒がり
- 顔やまぶたのむくみ
- 疲れやすさ・気力の低下
- 体重が増えやすい
- 便秘がちになる
こうした不調が抜け毛と重なるなら、髪だけの問題と決めつけないほうが安心です。複数のサインがそろうときほど、甲状腺を疑う手がかりになります。
一つ一つは見過ごしがちな不調でも、抜け毛と並ぶとつながりが見えてきます。気になる項目が二つ三つと重なるなら、相談する目安にしてください。
逆に、抜け毛があっても冷えや疲れがまったく見られない場合は、甲状腺以外の原因が大きいこともあります。気になるサインがどう組み合わさっているかが、原因を見分ける大切なヒントになるでしょう。
背景に橋本病など自己免疫の病気が隠れていることも
女性の機能低下症で多いのが、橋本病(慢性甲状腺炎)という自己免疫の病気です。自分の免疫が甲状腺を少しずつ攻撃し、ホルモンの分泌がじわじわ減っていきます。
進行がゆるやかなぶん、抜け毛や疲れを「なんとなく不調」で片づけてしまいやすいのが難しいところ。気になる症状が続くなら、早めの相談が遠回りを防ぎます。
橋本病は女性に多く、年齢を重ねるほど頻度が上がるといわれます。家族に甲状腺の病気がある方は、抜け毛のときに甲状腺も気にかけてみてください。
甲状腺機能亢進症・バセドウ病でも髪は抜けます
亢進症でも髪は抜けます。バセドウ病のように甲状腺ホルモンが増えすぎる状態でも、抜け毛は起こります。「ホルモンが多ければ髪も元気」とはいかないのです。
髪が細く柔らかくなり、コシが失われます
機能亢進症では代謝が過剰に高まり、毛根が休む間もなく回転します。その結果、髪は細く柔らかくなり、ハリやコシが失われて全体に薄く見えてきます。
一本一本が頼りなくなるため、スタイリングがまとまりにくいと感じる方もいます。
亢進症では髪だけでなく、爪がもろくなったり、肌がうすく感じられたりすることもあります。代謝が過剰に高まり、体のあちこちに変化が及ぶためでしょう。
動悸・発汗・体重減少を伴うことが多いです
亢進症の抜け毛は、体の「過活動」のサインと一緒にあらわれやすいのが特徴です。じっとしていても動悸がする、汗が止まらない、食べているのに体重が減る、といった変化が代表的でしょう。
手の細かなふるえやイライラ、寝つきの悪さを感じることもあります。
とくに、食べているのに体重が減るという変化は亢進症で目立ちます。抜け毛と一緒にこうした全身の症状があれば、甲状腺を一度調べてみる価値があるでしょう。
こうした症状を、ストレスや更年期の不調と取り違えてしまう方も少なくありません。抜け毛だけでなく動悸や発汗が長く続くようなら、甲状腺の検査を一度受けてみると原因がはっきりしやすいでしょう。
なぜ亢進症でも髪が抜けるのか
毛根の細胞は、甲状腺ホルモンが「足りない」状態にも「多すぎる」状態にも敏感です。どちらに傾いても髪の生えかわりのリズムは乱れ、休止期脱毛につながります。
低下症と亢進症は正反対の状態に見えて、髪のサイクルを乱すという共通点があります。だからこそ、抜け方の見た目だけで原因を決めつけられないのです。
機能低下症と亢進症の抜け毛の違い
| 項目 | 機能低下症 | 機能亢進症 |
|---|---|---|
| 髪質 | 乾いて太く、パサつく | 細く柔らかく、コシがない |
| 抜け方 | 全体的にゆっくり減る | 全体的に抜けて薄くなる |
| 伴う症状 | 冷え・むくみ・だるさ | 動悸・発汗・体重減少 |
抜け方だけで低下症か亢進症かを見分けるのは簡単ではありません。最終的にはホルモンの値を調べる必要があるため、自己判断で決めつけないことが大切です。
低下症と亢進症のどちらであっても、ホルモンの値を整える治療こそが髪の回復への第一歩になります。まずは思い込みを手放し、原因を正しく突き止めることが、遠回りを防ぐいちばんの近道です。
甲状腺が原因の抜け毛と女性の薄毛はどこが違う?
分け目が目立つその薄毛、甲状腺の病気ではなく女性型脱毛症のこともあります。原因によって対策が変わるため、まずはタイプの違いを押さえておきましょう。
分け目や頭頂部から薄くなる女性型脱毛症(FAGA)
女性型脱毛症(FAGA)は、分け目や頭頂部を中心に髪が細く短くなっていく薄毛です。甲状腺による抜け毛が頭全体に均等なのに対し、こちらは頭頂部の地肌が目立ちやすいという違いがあります。
加齢やホルモンバランスの変化が関わり、年単位でゆっくり進むのが一般的です。
女性型脱毛症は、男性のように生え際が後退するのではなく、髪全体の密度が静かに落ちていきます。甲状腺の抜け毛と見た目が似るため、検査で区別することが多くなります。
FAGAは女性ホルモンの影響を受けやすく、出産後や更年期をきっかけに目立つこともあります。進み方がゆるやかなぶん、早めに気づいて手を打つほど対策がしやすくなります。
円形脱毛症と甲状腺の自己免疫はつながっています
コインのように丸く抜ける円形脱毛症は、自己免疫が関わる脱毛です。同じ自己免疫の橋本病やバセドウ病を併発しやすく、甲状腺と深いつながりがあります。
円形脱毛症が見つかったときに、甲状腺の検査をすすめられるのはこのためです。
円形脱毛症は突然できることが多く、コインほどの脱毛斑が一つのことも、いくつもできることもあります。甲状腺の自己抗体が一緒に見つかる方もいます。
円形脱毛症そのものは皮膚科で治療していきますが、甲状腺の数値も一度あわせて確かめておくと安心です。髪と甲状腺の両面から診てもらうことで、思わぬ見落としを防ぎやすくなるでしょう。
鉄やビタミン不足が重なっているケースも多い
女性の抜け毛では、甲状腺の不調に鉄やビタミン不足が重なっていることもめずらしくありません。月経のある世代では鉄が不足しやすく、髪の元気にも影響します。
鉄・ビタミン不足で出やすいサイン
- 爪が割れやすい・反り返る
- 唇や舌の荒れ
- 立ちくらみ・動悸
- 集中力の低下
こうしたサインが重なるときは、甲状腺と合わせて栄養状態も調べてもらうと、抜け毛の背景がはっきりします。
鉄やビタミンを整えるだけで抜け毛がすべて止まるわけではありません。それでも、土台となる栄養が満たされると、髪が回復しやすい状態に近づきます。
とくに無理なダイエットや偏った食事が続くと、鉄やたんぱく質が不足して抜け毛を招くことがあります。甲状腺の治療と合わせて、毎日の食事を見直すことも髪の回復につながります。
甲状腺と抜け毛は病院でどう調べる?何科に行く?
甲状腺の状態は、1回の採血でかなり分かります。TSHという値を調べれば、機能の低下や亢進の手がかりがつかめます。
血液検査でTSH・FT4・FT3を測ります
甲状腺の検査の中心は血液検査です。脳から甲状腺へ指令を出すTSHと、甲状腺がつくるホルモンであるFT4・FT3を測り、全体のバランスを確かめます。
主な甲状腺の血液検査
| 検査 | わかること | 補足 |
|---|---|---|
| TSH | 甲状腺への指令の強さ | 低下症で高く、亢進症で低い |
| FT4・FT3 | 甲状腺ホルモンの量 | 実際の働きを反映する |
| 抗TPO抗体 | 自己免疫の有無 | 橋本病などの手がかり |
これらを組み合わせると、ただ機能が乱れているだけか、自己免疫が背景にあるのかまで見えてきます。
採血は数分で終わり、特別な準備もほとんど要りません。結果が出るまで少し待つこともありますが、髪の悩みの原因を客観的に確かめられる確かな方法です。
抗TPO抗体で橋本病やバセドウ病を見分けます
ホルモンの値に加えて、自己抗体を調べると原因がより明確になります。抗TPO抗体や抗サイログロブリン抗体が高ければ、橋本病やバセドウ病といった自己免疫の病気が疑われます。
原因がはっきりすれば、その後の治療方針も立てやすくなります。
抗体が高い場合でも、ホルモンの値がきちんと保たれていれば、すぐに薬を始めないこともあります。その際は定期的に採血をして、数値に変化がないかをゆっくり見守っていく形になります。
皮膚科と内分泌内科、どちらを受診する?
抜け毛そのものを相談するなら皮膚科、甲状腺の不調が疑わしいなら内分泌内科が向いています。迷うときは、まず受診しやすいほうへ行き、必要に応じて紹介してもらう形でかまいません。
大切なのは、一人で抱え込まずに専門の医師へつなぐことです。
甲状腺の不調と女性型脱毛症が重なっていることもあります。その場合は皮膚科と内分泌内科が連携して診てくれることもあるので、遠慮なく相談しましょう。
受診のときは、抜け毛が増えた時期や量の変化、ほかに気になる体の不調をメモして持っていくと話が早く進みます。限られた診察時間でも、要点が伝わって的確な検査につながりやすくなります。
甲状腺を治療すれば抜け毛は戻ります
甲状腺がきちんと治療できれば、抜け毛は戻っていきます。大切なのは、髪が回復するまでの数か月を上手に過ごすことです。
ホルモンが整えば数か月かけて回復します
甲状腺の治療でホルモンの値が落ち着くと、毛根は本来のリズムを取り戻します。ただし、いったん休止期へ入った髪が生えそろうまでには時間がかかります。
多くの場合、回復を実感できるまで数か月かかると考えておくと、気持ちが楽になります。
治療を始めた直後に、かえって抜け毛が一時的に増えることもあります。これは古い髪が押し出されて新しい髪に入れ替わる自然な変化で、必ずしも悪化を意味しません。焦らず経過を見守りましょう。
強く引っぱらない、栄養を整える毎日の習慣
治療と並行して、頭皮をいたわる暮らし方が髪の回復を後押しします。きつく結んだり力任せに梳かしたりせず、洗髪もやさしく行いましょう。
抜け毛が気になるときの毎日の習慣
| 習慣 | ねらい |
|---|---|
| 洗髪・ブラッシングはやさしく | 休止期の髪への負担を減らす |
| たんぱく質や鉄をまんべんなく | 髪の材料となる栄養を補う |
| 睡眠と休養をしっかり | ホルモンの乱れを助長しない |
| 自己判断でサプリを足さない | 検査値の乱れを避ける |
特別なことより、毎日の積み重ねが髪を守ります。無理なく続けられる範囲で整えていきましょう。
市販サプリに頼りすぎないほうがいい理由
抜け毛が気になると、ビオチンや亜鉛などのサプリに手が伸びがちです。けれど、不足がはっきりしない人ではっきりした効果を示す根拠は乏しいのが実情でしょう。
とりわけビオチンは甲状腺の検査値を乱し、診断を読み違える原因になることがあります。サプリを使う前に、医師へ一言相談しておくと安心です。
血液検査で鉄や亜鉛の不足がはっきり分かった場合は、医師の指導のもとで補うことが髪の回復を助けます。まず調べてから足すという順番を守れば、むだなく安全に栄養を補えるでしょう。
よくある質問
- 甲状腺の病気による抜け毛は治りますか?
-
はい、多くの場合は一時的なもので、甲状腺ホルモンの値が整えば少しずつ回復していきます。髪の生えかわりが正常なリズムを取り戻すまでには、数か月ほどかかるのが一般的です。
回復のペースには個人差があります。焦らずに治療を続けながら、抜け毛の量が落ち着いてくるかを見守っていきましょう。
- 甲状腺機能低下症の抜け毛にはどんな特徴がありますか?
-
一部分がはげるというより、頭全体がうっすらと薄くなる、びまん性の抜け方が特徴です。髪が乾いてパサつきやすくなり、眉毛の外側が薄くなる方もいらっしゃいます。
冷えやむくみ、疲れやすさといった体の不調を伴うことも少なくありません。気になる症状が重なるときは、一度医療機関にご相談ください。
- 甲状腺の抜け毛は何科を受診すればよいですか?
-
まずは皮膚科か内分泌内科の受診がおすすめです。抜け毛の状態を診たうえで、血液検査によって甲状腺ホルモンの値を調べてもらえます。
かかりつけ医がいる場合は、そちらに相談して紹介してもらう方法もあります。一人で抱え込まず、専門の医師に診てもらうことが回復への近道です。
- 甲状腺ホルモンの薬を飲み始めたら抜け毛が増えたのはなぜですか?
-
治療の途中で、髪の生えかわりのリズムが切り替わる時期に、一時的に抜け毛が増えることがあります。多くは数か月のうちに落ち着いていきます。
抜け毛が長く続いたり、ほかの不調を感じたりするときは、自己判断で薬を調整せず、必ず主治医に相談してください。
- 甲状腺の抜け毛にサプリメントは効果がありますか?
-
不足している栄養がはっきりしている場合を除き、サプリメントで抜け毛が改善するという確かな根拠は乏しいのが実情です。
とくにビオチンは甲状腺の検査値を乱し、結果を読み違える原因になることがあります。サプリを使う前に、まず医師に相談しておくと安心です。
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